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論文[薬剤疫学] Nonsteroidal anti-inflammatory drugs and risk of heart failure in four European countries: nested case-control study (Arfè A et al., BMJ, 2016 Sep)

www.ncbi.nlm.nih.gov

なぜこの論文か

エビデンス創出における観察研究の可能性,運用方法,具体的な分析手法について理解が個人として不十分と感じるため,このあたりの能力開発の一環として.

Abstract

OBJECTIVES:

To investigate the cardiovascular safety of non-steroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs) and estimate the risk of hospital admission for heart failure with use of individual NSAIDs. DESIGN: Nested case-control study.

SETTING:

Five population based healthcare databases from four European countries (the Netherlands, Italy, Germany, and the United Kingdom).

PARTICIPANTS:

Adult individuals (age ≥18 years) who started NSAID treatment in 2000-10. Overall, 92 163 hospital admissions for heart failure were identified and matched with 8 246 403 controls (matched via risk set sampling according to age, sex, year of cohort entry).

MAIN OUTCOME MEASURE:

Association between risk of hospital admission for heart failure and use of 27 individual NSAIDs, including 23 traditional NSAIDs and four selective COX 2 inhibitors. Associations were assessed by multivariable conditional logistic regression models. The dose-response relation between NSAID use and heart failure risk was also assessed.

RESULTS:

Current use of any NSAID (use in preceding 14 days) was found to be associated with a 19% increase of risk of hospital admission for heart failure (adjusted odds ratio 1.19; 95% confidence interval 1.17 to 1.22), compared with past use of any NSAIDs (use >183 days in the past). Risk of admission for heart failure increased for seven traditional NSAIDs (diclofenac, ibuprofen, indomethacin, ketorolac, naproxen, nimesulide, and piroxicam) and two COX 2 inhibitors (etoricoxib and rofecoxib). Odds ratios ranged from 1.16 (95% confidence interval 1.07 to 1.27) for naproxen to 1.83 (1.66 to 2.02) for ketorolac. Risk of heart failure doubled for diclofenac, etoricoxib, indomethacin, piroxicam, and rofecoxib used at very high doses (≥2 defined daily dose equivalents), although some confidence intervals were wide. Even medium doses (0.9-1.2 defined daily dose equivalents) of indomethacin and etoricoxib were associated with increased risk. There was no evidence that celecoxib increased the risk of admission for heart failure at commonly used doses.

CONCLUSIONS:

The risk of hospital admission for heart failure associated with current use of NSAIDs appears to vary between individual NSAIDs, and this effect is dose dependent. This risk is associated with the use of a large number of individual NSAIDs reported by this study, which could help to inform both clinicians and health regulators.

Abstractのみ全訳.

目的

ステロイド性抗炎症薬の循環器系に対する安全性を追究し,NSAIDs各薬剤の使用に伴う心不全による入院のリスクを推定する.

研究デザイン

Nested case-control study(コホート内症例対照研究)

実施状況

欧州4カ国(オランダ,イタリア,ドイツ,イギリス)のヘルスケアデータベースに基づく5集団.

研究対象者(データベース研究)

2000年から2010年の間にNSAIDによる治療を開始した成人(18歳以上)を対象とした.全体で心不全による入院92,163症例が特定され,8,246,403例の対照群をマッチングにより設定した(マッチングは年齢,性別,組入れ年を用いたリスクセットサンプリングによる).

主要評価項目

心不全による入院のリスクとNSAIDs 27剤(古典的NSAIDs 23剤とCOX2選択的阻害剤 4剤)それぞれの使用状況との関係を用いた.この関係性は多変量条件付ロジスティック回帰モデルにより評価した.NSAID心不全発症リスクとの容量反応関係についても評価した.

結果

NSAIDs使用中(直近14日以内に使用)の患者は,過去にNSAIDs使用歴がある者(最後のNSAIDs使用から183日以上経過)と比べ,心不全による入院リスクが19%高かった(調整オッズ比: 1.19, 95%CI: (1.17-1.22)).心不全による入院リスクの上昇は,古典的NSAIDs 7剤(diclofenac, ibuprofen, indomethacin, ketorolac, naproxen, nimesulide, and piroxicam)およびCOX2阻害剤 2剤(etoricoxib and rofecoxib)に認められた.オッズ日はnaproxenの1.16 (1.07-1.27)からketorolacの1.83 (1.66-2.02)まで幅が見られた.diclofenac, etoricoxib, indomethacin, piroxicam, rofecoxibの超高用量群(1日に2日当量以上)では,心不全による入院リスクが2倍以上と推定されたが信頼区間の幅は広かった.中程度の用量(0.9-1.2日当量)であっても,indomethacin および etoricoxibはリスク上昇と関連していた.celecoxibが通常の用法用量で心不全入院リスクを上昇させるエビデンスは認められなかった.

まとめ

NSAIDsの現行使用と関連する心不全による入院リスクは個々のNSAIDsにより異なり,効果量は用量に依存する.このリスクは本研究により報告された数多くのNSAIDsの使用と関係しており,臨床家と規制当局の双方にとって有意義な知見となろう.

この研究の目的は何か

NSAIDsの標的分子にはCOX1,COX2があり,抗炎症作用はCOX2の阻害によることが知られている.COX1の阻害は消化器系の副作用の原因となるため,COX2を選択的に阻害する薬剤は特に低リスクの抗炎症薬とみなされてきた. ところが,近頃COX2の阻害がアテローム血栓性血管イベントのリスク上昇と関係があることが指摘され,エビデンスの収集が進められてきた.いくつかのメタアナリシスや観察研究の成果により,現在ではガイドラインにおいて,心不全リスクの高い患者に対するNSAIDsの使用が制限されている. このようにエビデンス収集は進んでいるものの,心不全リスクの上昇に対する,実臨床におけるNSAID(COX2阻害剤含)各分子の効果用量反応性については未だ明らかになっておらず,本研究はこれらの解明を目的としている.

この研究はどのようなデータソースを用いているか

データソース概要

計3,700万人をカバーする欧州の4データベースからデータを取得した.

Database Country Population Outline Link
PHARMO Netherlands 2.2 million GPデータや薬局データを患者レベルで結合 Link
SISR Italy 7.5 million 国営の無償医療サービスの利用者データ
OSSIFF Italy 2.9 million 地方自治体の医療サービス受益者データ
GePaRD Germany 13.7 million 保険組合による償還請求データ Link
THIN UK 11.1 million プライマリケアのデータベース Link

この研究ではどのようなモデリングが行われているか

マッチング

  • 各Caseに対し,性別,コホート組入れ時の年齢,コホート組み入れの日付を用いて,Risk Set Samplingによりマッチングした.
  • Controlの数は各Case100人を上限とし,Caseを抽出したデータベースの中で,Caseのイベント発生時点よりも後のデータを保持している者の中から特定した.

※ Risk Set Sampling: コホートのうち,Case発生時点での全リスク集団からランダムサンプリングを行う.全リスク集団であるから,当該時点以降にイベントを発症した患者や,別のCaseに対して既にControlとして選ばれている患者も候補として含まれる.なお,本研究ではCaseによってコホートに組み入れられるタイミングが異なるため,リスク集団は「同時点にコホートへ組み入れられた」という条件を課している.また,完全なランダムサンプリングではなく,年齢・性別と統制した上で抽出を行った.
参考URL(pptファイル): http://www.jcog.jp/doctor/tool/C_150_0040_2.ppt

モデリングの枠組み

  • 個人レベルのデータに対し,多変量ロジスティック回帰モデルを構築した.
     \displaystyle \ln \frac{p}{1-p} = X \beta
    ただし, pはイベントの発生確率,Xは後述のコホート及び種々の共変量をまとめたベクトル.各変数に対するオッズ比を計算している.

共変量

  • 年齢,性別(マッチング)変数
  • 心血管疾患の既往歴,合併症,その他生活様式にかかわる特徴(喫煙など)
  • イベント発生日から90日以内に使用していた併用薬剤

所感その他

所感

  • Limitationで触れられているが,OTCの影響が気にかかる.仮にOTC NSAIDsにより本研究の結果が歪められているとすれば,データを国ごと分割し,各国でOTCとして市販されているNSAIDsとそうでないNSAIDsとを比較することで影響の度合いを見積もることは可能か(雑ではあるが…).もし著者らの指摘する「NSAIDs薬剤ごとの影響差」が単にOTC利用状況の交絡によるものであれば,本研究を参照した臨床家は考える必要のないリスクの差異を考慮してしまい,薬剤選択を誤る恐れがある?
  • 検出力不足について,サンプルサイズを設計できるわけではない以上,ある程度の検出力不足は覚悟して研究を進める必要があるのだろうが,このあたりとはどう付き合えばいいんだろう?結果を見た上で,その妥当性を評価するために検出力を計算するといった感じ?

今後の学習課題